海揺録

依存や自律というものと向き合う中で考えたことを書いています。もしも、同じようなテーマについて考えている方がいれば、僕もその一人なので、共に考えていけたらとても嬉しいです。精節録というブログ名でした。

受容のグラデーション

ある行動の後、予想される結果が脳内に映写される。 予想と異なる結果が現実にもたらされると、 その差異が、我々に予想の前提についての懐疑を、 計算させるためのトリガーとして機能する。 簡単に言い換えると「予想と違ったのはなぜ?」という問いが、脳…

概念による自縛、道具としての概念

信号の色だけをみて、横断歩道を渡っていれば、信号を無視して突っ込んでくる車があったとき、轢かれてしまう。 「私は信号を守ったのに」と嘆いても、命を落としてしまっては仕方がない。 もし、轢かれそうになっている子供がいれば、彼を救うために歩道に…

言語の再道具化

自らの能力とは無関係に、一時期の運に恵まれていた人々は、認知的不協和が生じやすい。 認知的不協和は、そのまま心理的に不安定な状態と直結する。 その不安定さと、肥大化した実体なき自尊心に対する防衛規制が、彼らの言動に歪な雰囲気を加えている。 他…

「沙羅双樹の花の色」

自然に逓減する才能。若さ。 ただ下がりゆく価値と、固着していく価値観。 失われる権力と、離れていく人々。 札束でできた玉座のみが、虚城に残される。 生きる術を知らぬ王は、その玉座を売りに出す。 地べたの温度を肌で感じて、自らの虚無を恐れる。 交…

真理の鮮度

読書は、自らが現時点で実感している真理感の枠組みのその先の可能性を、常に提示してくれる。つまり、ある概念による自らの緊縛化を避けることにつながる。 局所最適に留まり続けるような思考停止から、大域解へ旅立つための追い風になってくれる。 「これ…

「言葉に寄生する悪魔と、凪」

世にある何らかの現象を、理解しようと試みる。 そのときに、人は言葉に頼り、定義を考える。 定義は、前提や枠組みを必要として、 真理らしき何かを見つければ、自らをその箱に閉じ込めるかのように、生を捉える。 現代人の多くが、時間を無意識に気にして…

「虚無に進む国」

昔、ある国があり、そこは教育熱心ということで有名でした。 とある旅人はその噂を聞いて、その国を訪れてみました。 そして、旅人が見た光景は次のようなものでした。 子供が「あれをやりたい」と言えば、 大人は「それはだめです」と返し、 子供が「これを…

「奴隷と腕輪」

昔、ある王国では、奴隷の首輪を用いて、 奴隷の品質を一目で分かるようにしていた。 白銀、金、銀、銅、ダイヤモンド、など、 素材による違いはもちろんのこと、 装飾や、紋章など、さまざまな工夫が施されていた。 王国の思惑は、上手く機能した。 奴隷た…

科学、動物、天啓

想起された特定の行動のイメージについて、 実際に身体や思考が駆動する段階に進みづらくなるように自動的に施される、 精神的な違和感の一種がある。 「レンガを積む」という文脈よりも、 「家を建てる」という文脈に対して発動しやすい。 より複雑なもの、…

想像の、さらに外。

最高に面白いゲームを買ってくるとする。 その同じ日に、ゲームの攻略本も一緒に買ってくる馬鹿はいない。 最高に面白いミステリー小説を読み始める。 その最中に、ネタバレサイトを閲覧する馬鹿もいない。 一番、難解な壁を試行錯誤しながら登攀する。 その…

春に向かう。

頭の習慣に、心がそっと石を置いて、流れを変える。 外には春の長雨が降りしきる。 水流は、無為の湖へと合流し、その時を待つ。 植えていた種が、水を浴びて、眠い目を擦る。 風が、空気の時代を変える。 古いものは新しく。 風がやめば、空気は文化になる…

選曲と静寂

電波を通じて、ラジオから音楽が流れている。 脳波を通じて、自分の頭の中に音楽が流れている。 チャンネルは、選択することができる。 好きな音楽を選ぶのに、蘊蓄はいらない。 ただ感じるままに、選べばいい。 時には、何も聴いていない状態も選択できる。…

「為さざるあって、成すあり」(2)

過去、この言葉の解釈を、 様々な行為の中から、為すべきことを選択し、 それ以外を行わないことによって、 成されることがあるというように捉えていた。 その解釈を胸に、 最も集中すべきことのみに時間を注がんとして、 結果としては、ほどほどの実りにと…

灯台

今という心は、 夢という城壁と共に、 歩むような姿をしている。 様々な表現によって描かれる夢。 それが多様なほどに、城内の平和が保たれやすい。 実態のない脅威を防ぐには、 実態なき防壁が必要なのだ。 意識に向けられうる毒を、浄化して薬とするには、…

結果としての美しさ

人が、人のみが歩きやすいために舗装されたアスファルトは、ひび割れて哭く。 庭の景観のためだけに、日陰に埋もれた草花は、剪定されることを知りながらも、枝葉を伸ばさずにはいられない。 結果としての美しさを、目的としての美しさとして模倣する、その…

自己超越

大きな器に水が入っている。 長い時間をかけて、中の水は蒸発していく。 いずれ、器は空気で満たされる。 この世界には、多様な色彩をした雨が降り注いでいる。 少し歩けば、そうした雨が混ざり合った池や湖も見つかる。 水を貯めるのは、時代を追うごとに容…

思索の泥濘と遊泳。

昔々、古の村に、悟りを得たとされる老僧がいた。 彼は長い間、山の中で瞑想し、多くの苦行を経て、 ついに悟りの境地に至ったと言われていた。 村の人々は老僧を尊敬し、彼の教えを求めて絶えず訪れた。 老僧は自らの悟りを語り、その言葉は深く、 時には謎…

心と行動。

眠い時は、ただ眠るだけである。 眠くない時は、起きているだけである。 これが最もシンプルな欲の姿。 眠くもないのに、ベットに入って、 睡眠欲が湧いてくるのを待っている人がいたら、 これはちょっと変だ。 お腹が減ったら、何かを食べる。 お腹がいっぱ…

心と枯山水

同じアニメを観ても、 人によって感想が異なる。 同じ人と接していても、 相対する相手によってその人への印象は異なる。 自らの心の状態が、 現象への解釈を変容させている。 自らの心の振動数と同調するように、 目の前の現状が感受される。 眼前に存在す…

哲感談話

哲学徒「生きる意味とは、要するに何なのですか?」 先人「それは、感じるものなんだよ。言葉よりも先に、心の感覚でね。」 哲学徒「感じるとは一体、ど、どういった感覚なのでしょうか?」 先人「まあ、目に見えない世界に、その集積体のような、太陽みたい…

天使と砂の階段

かつて、大空を自由に飛び回ることができる天使がいた。 この天使は、あるとき、地上に舞い降りると同時に、何かの拍子にほとんどの記憶を失ってしまった。 天使の覚えていた記憶といえば、いつも空から眺めていた美しい景色とその感動だけだった。 彼は、背…

pieces and peace

自他を分離しようと試みるそれを、エゴとか自我とか呼ぶとしよう。 目の前に、作りかけのパズルが散らかっている。 パズルのピースは、それぞれに自分の絵柄について周りと話している。 おっと、一番騒がしいピースたちをみてみると、どうやら喧嘩しているよ…

ユーラの道

かつて、遠い小さな村に、ユーラという名の少女が住んでいた。 ユーラは幼い頃から色彩に魅了されていた。彼女は村の風景や花々を見ては、心の中でそれらを描くことを夢見ていた。 一方で、村の伝統と期待は、彼女に別の未来を刷り込んでいた。女性の役割は…

心と知恵

昔々、深い森の中に一本の若木がありました。 この若木は、太陽の光を浴び、雨水を得ることで、少しずつ成長しておりました。 しかし、若木はいつも不安でいっぱいで、 他の木々のように大きくなれるか心配でした。 ある日、森の賢者である大樹が若木に声を…

観念の子、思念。

観念は、その子供として、思念を生み出す。 思念は、観念体の周辺を彷徨う。 振動数が磁力のように機能していることで、 それによって思念は親を認識し、周辺に留まる。 ある観念体が、抱えきれなくなった思念は、 外に飛び出そうとする。 これは、投影とい…

真実の分離

ある観念群が毛糸の玉のようになって、 それを覆うようにガラスのような、はたまた鏡のような球体がある。 この球体は複数偏在している。 その球体は、 あるときは透過的で、他と重なったり離れたり、 あるときは鏡面的だったり、それがガラス面であったり、…

「自己の木」と「他者の花」

どこかの深い森の中に不思議な庭園があるという。 その庭園には、二つの異なる植物が植えられているらしい。 一つは「自己の木」と呼ばれ、もう一つは「他者の花」と名付けられている。 「自己の木」は、強くて堅固な根を持つ。適切な水やりと手入れが必要で…

愛と存在の完全性

愛する自らの赤子に向かって、例えば「早く走ってくれ」と苛立つ親がこの世のどこにいるだろうか。 大人と比較して、あらゆる能力が未熟な状態にある赤子だが、ほとんどのケースで完全に愛されている。 つまり、何の条件もなく、 無条件の愛というのは普通に…

君の味。

高度に抽象化された学問から得られる実利は、ほとんどの人々にとって、その仕組みを理解することは易しくなく、つまり、信じて使うということになる。 果たして、宗教との違いがどこにあるのか。 薬を飲む時、我々は無意識に処方元を信頼して服用する。人間…

知旅永久

知は果てしなく、旅人の足取りに焦りなく、伴侶の賢さに際限なく、 来る年月の僅かさが、積み重ねた霜が積雪となり、 ひと冬、地を覆ったかにみえても、明くる年、新たな地表の中に浸みて消える。 終わらぬ自転の恒久に、自然が泰然自若たる理由を知る。