大きな器に水が入っている。
長い時間をかけて、中の水は蒸発していく。
いずれ、器は空気で満たされる。
この世界には、多様な色彩をした雨が降り注いでいる。
少し歩けば、そうした雨が混ざり合った池や湖も見つかる。
水を貯めるのは、時代を追うごとに容易になっていく。
その容易さの反面で、空気で満たされている状態は珍しくなる。
必死で走っている最中だと、深い呼吸を行うのが珍しいことに似ている。
器を空にしているときに、中にある空気を感じられるかどうかが、
虚無感や焦燥感を味わうのか、満足感や充実感を味わうのかを分けている。
頭に流れる雑音から、自分の呼吸へと焦点を戻す。
呼吸の速度を少しずつ落としていく。
何かのために、今があるのではなく、
今のために、何かがあるのだということを思い出す。
成果を喜ぶために、過程があるのではなく、
過程を楽しんだ副産物として、成果が転がっているのだと視点を定める。
どこかに辿り着くために、旅があるのではなく、
旅のために、次の目的地が存在している。
今、この瞬間に、桁外れに最高な気分でいる自分をイメージする。
その自分が感じている感覚を味わう。
その感覚の慣性のままに、今日を生きる。
そして、そこに現れる矛盾や問題と真摯に向き合う。
この姿勢を自己超越的姿勢と呼びたい。